作家 丸谷才一 さん死去
2012年(平成24年)10月13日 死去 享年87歳
作家 丸谷才一 さん死去
作家で文化勲章受章者の 丸谷 才一(まるや さいいち)さんが2012年(平成24年)10月13日、心不全のため東京都内の病院で死去した。87歳だった。
豊かな教養を背景に「笹まくら」や「たった一人の反乱」など、知的で明るい物語性に満ちた小説を書き続け、また、評論や翻訳でも知られた。1968年(昭和43年)には「年の残り」で芥川賞を受賞した。昨年には「持ち重りする薔薇の花」を刊行。今月7日に倒れる寸前まで新作に取り組んでいた。

人物 / 略歴
丸谷 才一(まるや さいいち、1925年(大正14年)8月27日 ~ 2012年(平成24年)10月13日)
山形県鶴岡市に生まれる。小説家、文芸評論家、翻訳家。
日本文学の暗い私小説的な風土を批判し、軽妙で知的な作品を書くことを目指した。
小説の傍ら『忠臣蔵とは何か』『後鳥羽院』『文章読本』などの評論・エッセイも多数発表しており、また英文学者としてジョイスの『ユリシーズ』の翻訳などにも携わった。
◆ 略 歴
1925年、山形県鶴岡市にて、開業医・丸谷熊次郎と妻・千との間に次男として誕生。
1943年、旧制鶴岡中学校(現・山形県立鶴岡南高等学校)を卒業。中学在学中に勤労動員を体験して軍への嫌悪感を募らせる。
当時の優等生は陸軍士官学校か海軍兵学校に進むことを期待されていたにも関わらず、校長の勧めを無視して東京の予備校に1年間通学。1944年、旧制新潟高等学校文科乙類に入学。
1945年、召集によって山形の歩兵第32連隊に入営し、半年後に復学する。
1947年、東京大学文学部英文科に入学。中野好夫、平井正穂のもとで主に現代イギリス文学を研究、ジェイムズ・ジョイスを知り大きな影響を受ける。
1950年、卒業論文「ジェイムズ・ジョイス」を提出し卒業、同大学院修士課程に進む。修士課程時代には桐朋学園で英語教師としても勤務しており、当時の教え子には小澤征爾や高橋悠治がいた。1951年、東京都立北園高等学校講師。
1952年、篠田一士、菅野昭正、川村二郎らとともに季刊同人雑誌『秩序』を創刊。同誌に『エホバの顔を避けて』を連載。グレアム・グリーンの『不良少年』を翻訳、筑摩書房より刊行。以後英文学の翻訳を行う。
同年高千穂高等学校講師、1953年、國學院大學講師。1954年、同大学助教授に昇進。ここで中野孝次らと知りあう。同年10月、演劇批評家・根村絢子と結婚。戸籍上は根村姓を継いだ。
1960年、初の長編小説『エホバの顔を避けて』を刊行。1964年、ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』を永川玲二、高松雄一と共訳。
1965年、國學院大學を退職。東京大学英文科非常勤講師として同年より2年間「ジェイムス・ジョイス」を講義。
1966年2つめの長編小説『笹まくら』、『梨のつぶて』刊行、新仮名遣いを使用する。1967年、『笹まくら』で河出文化賞を受賞。『鐘』刊行。
1968年『年の残リ』刊行、7月に同作品で第59回芥川賞受賞。
1972年、長編小説第3作『たった一人の反乱』を刊行し話題となる。同作品で第8回谷崎潤一郎賞受賞。以後ほぼ10年に1作のペースで長編小説を刊行する。
1973年、評論『後鳥羽院』を刊行し翌年読売文学賞受賞。1974年『横しぐれ』発表。これ以降の著作は歴史的仮名遣いを使用。
1975年、「四畳半襖の下張事件」において、被告人野坂昭如の特別弁護人として出廷。
1982年、長編第4作『裏声で歌へ君が代』刊行。
1985年、『忠臣蔵とは何か』を発表し、忠臣蔵における御霊信仰とカーニバル性について国文学者、諏訪春雄と論争を行う。同作品はこの年の野間文芸賞を受賞した。
1988年、『樹影譚』で川端康成文学賞受賞。
1991年、種田山頭火を扱った『横しぐれ』の英訳がイギリスのインディペンデント外国小説賞特別賞受賞。
1993年、長編第5作『女ざかり』がベストセラーとなり、翌年吉永小百合主演で映画化された。
1995年、鶴岡市名誉市民に推戴される。
1998年、日本芸術院会員に選出。
1999年、評論『新々百人一首』が刊行し翌年に大佛次郎賞受賞。2003年、長編第6作『輝く日の宮』で泉鏡花文学賞受賞。
2004年、2003年度朝日賞受賞。
2006年、文化功労者。
2010年、『ジェイムズ・ジョイス「若い藝術家の肖像」訳注 (改訳版)』で読売文学賞(研究・翻訳部門)受賞。
2011年秋に文化勲章を受章した。
2012年10月13日、心不全のため東京都内の病院で死去した。享年87歳。
特記事項
主な作品に『笹まくら』、『年の残り』、『たつた一人の反乱』、『裏声で歌へ君が代』、『女ざかり』などがある。
◆ 丸谷才一 / 主な受賞一覧
◇ 芥川龍之介賞(1968年) - 『年の残り』により
◇ 谷崎潤一郎賞(1972年) - 『たつた一人の反乱』により
◇ 読売文学賞(1974年・2010年) - 『後鳥羽院』・『若き芸術家の肖◇ 像』新訳により
◇ 野間文芸賞(1985年) - 『忠臣蔵とはなにか』により
◇ 川端康成文学賞(1988年) - 「樹影譚」により
◇ 芸術選奨(1990年) - 『光る源氏の物語』(大岡信との対談)により
◇ 大佛次郎賞(1999年) - 『新々百人一首』により
◇ 菊池寛賞(2001年)
◇ 泉鏡花文学賞(2003年) - 『輝く日の宮』により
◇ 朝日賞(2004年)
◇ 文化勲章(2011年)
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